灯りを持って、年を超える


今年も残りわずかになりました。


毎年この時期になると「一年の振り返り」を書こうとしながら、

気づけばうまく言葉にならないまま年を越してしまう──そんなことがよくあります。


振り返ってみれば、今年はとても静かに積み重ねる一年でした。

派手な出来事があったわけではなくても、

日々の生活で考えたこと、手を動かして作ったもの、

そして出会った人たちとの時間が、

自分の中に少しずつ沈殿していたのだと、ほんの最近になって気づきました。


創作に対しても、向き合い方が変わった年でした。

“外へ広げる”ことよりも、“内側を整える”ことに重心を置いてみた。

その中で生まれた音や、誰かの想いが作品に重なった瞬間があって、

気づけば、小さな灯りのようなものがいくつも心に残っていました。


今日は、その“灯り”について書いてみようと思います。

きれいにまとめるというより、ひとつずつ拾い上げて並べていくような、

そんな気持ちで。





一章


冬の朝、静かな光が部屋にすべり込んでいる。

今まさにこの文章を書いているデスクにも、

淡い陽射しがそっと伸びてきて、

その静けさが“一年の終わりならではの空気”を連れてくる。


いったん手を止めて顔を上げると、

部屋の奥に満ちていた温もりと、窓の外の冷たい光が、

ゆっくりと混ざりあっていくのがわかった。




机の端に積み重なったメモ。

録り溜めた旋律の断片。

途中で止まったままのノート…。



立ち上がって窓辺へ歩み寄る。

外の白い空気と室内の影が溶けあう境界に、

自分の姿がかすかに重なって映っている。






忙しさの中では目に入らなかったそれらが、

冬の光に照らされて静かに輪郭を取り戻していく。


“振り返り”という堅い作業ではなく、

忘れかけていた灯りをひとつずつ拾い上げるような時間。


窓辺に佇むと、

今年静かに積み重ねてきた日々の気配が、

朝の冷たい光の中で細い残光となって滲んでいるのがわかった。






第二章:今年の創作を照らした3つの灯り


今年の創作を振り返ると、

いくつかの瞬間が静かに“輪郭”を帯びながら、自分の歩みを照らしていたことに気づきます。

その“灯り”は、派手ではないのに、確かに心の奥で火をともしていたものでした。

その中でも、とくに印象に残っている3つを、ここに残しておきたいと思います。




① 森のピアノ ―― はじまりの灯り


今年、最初にそっと灯ったのは、

地元・四万十町に設置された野外ピアノから生まれた楽曲「森のピアノ」でした。


川のせせらぎ、木々のざわめき、朝の冷たい空気。

幼馴染がスタインウェイで奏でてくれた音色は、

“作品を作る”という行為よりもむしろ、

自分の奥に眠っていた記憶がほどけていくような感覚をもたらしてくれました。


後日聞かせてもらった、演奏に込められた想いや願い。

その言葉のひとつひとつも、胸の奥で小さな灯りとして灯り続けています。


静かだけれど、確かにそこから何かが始まった光でした。




② 秋香 ―― 記憶を照らす灯り


そして今年、もっとも深く心に灯ったのが、

過去に制作した楽曲『秋香』と改めて向き合った時間でした。


金木犀の香り、秋の柔らかな光、昭和記念公園での撮影。

ブログ執筆のために映像と台本を読み返す中で、

当時とは異なる温度が静かに立ち上がり、

“もうひとつの秋香”が胸の内でそっと灯ったのです。

監督が切り取ったまなざし。

主人公を演じた野中さんの呼吸の揺らぎや視線の動き。

それらが重なり合って、

誰かの記憶が光と触れ合って立ち上がる瞬間が、確かに作品の中にありました。


撮影の最中、雲の切れ間から差し込んだ一瞬の光。

あの光は象徴的で、

作品そのものに新しい呼吸を吹き込んでくれたように感じています。


『秋香』は、

音楽と映像、言葉と身体、そして関わった人すべての感性が重なって生まれた

“記憶の灯り”であり、

今年の自分にとって、最も深く、最も長く灯り続けた光でした。




③ 配信ライブ ―― 声が繋いだ灯り


そしてもうひとつ、今年の創作を静かに支えてくれたものがあります。

毎月の配信ライブです。


画面越しの世界は小さく見えるのに、

そこで交わされる言葉や沈黙には、リアルとは少し違う“親密さ”がありました。


特に印象に残っているのは、

フィールドレコーディングを取り入れた回です。


沢を流れる水音、夕暮れに沈む街の気配、

テント場へ向かうときの足音と呼吸。

それらを小さく流しただけで、

画面の向こう側と自分の部屋の“空気の温度”が少し近づいたような気がしたのです。


曲の間に流れる沈黙も、その日の気温も、

コーヒーを注ぐ音さえも、

配信では、どんな音も、その日の風景になっていく。


外へ広げるためのライブではなく、

そっとつながるためのライブへ。

この灯りは、目立たないけれど確かに今年の創作を支えてくれた光でした。





第三章


今年を照らしていた灯りを辿っていくと、

そのいくつかは、未来へと静かに延びる細い光を帯びていました。

まだ形を持たないけれど、確かに胸の奥で灯っている光。


その最も小さな灯りは、

部屋の静けさの中でふいに立ち上がった“旅の歌”でした


登り坂の息づかい、泥を跳ねる道、向かい風の音。

何気ない瞬間が少しずつ積み重なり、

歌詞の断片としてそっと集まっていったものです。


歌詞が完成した今も、

まだ「最初のメロディ」をそっと確かめるように、

胸の奥で静かに灯り続けている部分があります。


誰かと並んで歩いた足音。

背中を押す“声なき声”。


そんな体の記憶が、やがて揺るぎない感情のうねりとなり、

この歌の中に確かに息づいています。


“Never give up”“Let me go”


――そんな言葉が自然と生まれてくるのは、

今年、自分の歩みそのものと深く向き合う時間が多かったからだと思います。


まだ録音の時期も、公開の形も決めてはいません。

けれど、

この歌はきっと、次の一年へ向かう「最初の灯り」になる。


この灯りがどんな形に育っていくのか。

その答えを、静かに見届けていこうと思います。



 


第四章


さて、こうして今年を振り返ってみると、

大きな出来事があったわけではありませんが、

仕事の合間や帰宅後の静かな夜、

配信の準備をしている時間、

あるいは朝のコーヒーを淹れるわずかなひととき――

そうした“普通の日常”の中に、思いがけず多くの気づきがありました。


生活と創作のあいだに揺らめく小さな灯りは、

今年はいつもより濃く、そして確かに残っていたように思います。


来年は、その灯りを無理に大きくしようとするのではなく、

いまの延長にある日々の中で、

自然な形のまま音を育てていけたらと思っています。


思うようにいかない日もある。

けれど、その中でふと心が動いた瞬間を拾い上げて、

また歌へ、物語へと変えていけたらと思っています。


いまこうして言葉を綴っているこの時間も、

いつか振り返ったとき、

小さな灯りのひとつとして静かに残っているのかもしれません。


また来年も、この場所で、

ゆっくりと言葉と音を紡いでいくつもりです。

その物語を、みなさんと共有できることを楽しみにしています。




【告知・リンク】

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関連ブログ・作品紹介

「秋香」──巡りめぐる季節とともに

「Everyday」──日常から紡がれる物語


次回の配信ライブ予定

→ 2025年12月17日21時開始『冬の始まりに灯す音』

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Masafumi Yoshimoto web site

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